2020.09.04

アルスフェス2020 ・ 過去からの流れと今年のチャレンジ ・

こんにちは。博報堂ブランド・イノベーションデザインのプロデューサー、田中れなです。前回に続いて、2020年のアルスエレクトロニカフェスティバルに向けたマインドセットを作っていきたいと思います。

Credit:Ars Electronica

今年は緊急事態宣言以降、歩く回数がめっきり減りました。毎年9月のフェス期間中はリンツの街を駆け回ることで毎日2万歩超を稼ぎ、日頃の運動不足を無かったことにしていたのですが、今年はその運動量すら見込めず、年末に向けて足腰の弱りが気になっています(個人的な悩み)。しかし、身体を動かしていないことは気づきやすいのに、自分が社会を見る視点というのは意識しておかないと、固定されてしまいがち。ということがあるのではないでしょうか。

アーティストは、まだこの世に存在していない価値観や、毎日の一歩先を形にして見せてくれる、未来の先行指標です。彼らに触れることで、日々慌ただしく過ぎていく中でも、自分自身が何を大切にしているか、自分で意識することができ、また新しい世界が未来に広がっていることに気づくことができます。ぜひ、このオンラインで参加が可能な今年、アルスフェスティバルに刺激を与えてもらいませんか。

今年のフェスティバルプログラムはこちらから!

ここからは今年のフェスティバルを、昨年の流れからご紹介したいと思います。

2019年のアルスフェスでのキーワードは『Language』だった

昨年のフェスティバルテーマは「Out of the Box- The Midlife Crisis of Digital Revolution(デジタル革命のアイデンティティの揺らぎ)」で、弊社がフェス終了後に出したキーワードの一つが『Language』でした。これは植物との対話、菌との対話、他者・多生物を尊重して扱うという作品が数多く見受けられた影響を受けています。他者や他生物との意思疎通に”言葉”を持ち込むことで人間の可能性を拡張し、またその新しい環境下に置かれた自身が新たな視点を獲得するため-自分の思考へのリフレクション(反映)のために使用する”言葉”=『Language』と、2つの意味をかけていました。

Ars Electronica Festival 2019 Trailer “Out of the Box” / Video Edit: Ars Electronica / Yazdan Zand /Music: Karl Julian Schmidinger

今年はLanguageから’Garden’へ、と考えると、自分とは異なるもの(他者・他生物・人工物)へアクセスするだけに止まらず、自らそのシーンへと主体的にドプンと身を投じて訪問するという流れになっているのではないか、というのが現状の見立てです。

もう一つ前の2018年のフェスティバルは、ERROR -the art of imperfection(エラー 不完全性のアート)。AI時代、エラーこそが人間の創造性ではないか、という問いかけでした。そこから2019年、今年と、それらの人間の可能性へのエンパワーメントに加え、時勢も伴い環境への配慮としてのエコロジー、脱人間中心主義へと志向が強まっているようにも見受けられます。

 

新しいチャレンジ:Creative Question Challenge

アルスエレクトロニカと博報堂の協働で実施していたFuture Innovator Summit(FIS)。FISとは、2018年に東京でも開催したクリエイティブワークショップですが、今年のアルスエレクトロニカの挑戦と共にこのFISもアップデートを遂げました。(昨年のアルスフェスでのFISはこちら) 

それがCreative Question Challenge(CQC)です。CQCとは、まだ世にない創造的なアイデア、問いを生み出すことを目的としたブレーンストーミング・フォーマットです。グローバル社会で共に未来のビジョンを創造していくプラットフォームとして、またクリエイティブなエコシステムを継続的に構築するためのハブとして、我々がこの時代に大事だと思う問いを衝突を恐れず生み出し、社会へ展開する新しいダイアローグの場として開発しました。構造としては、パネリストとしてアーティストやイノベーター、アントレプレナーを招致し、互いのCreative Questionをぶつけ合い、パネリスト同士も刺激を受け合うことを設計しています。

ここで弊社はカタリスト(ファシリテーター)を担い、主張をまとめ角の取れた議論を形成するのではなく、まだ表立って言語化されていない問題や意識に光を当てる場としてその場をオーガナイズします。問い自体の力強さを求めると同様に、そこに視聴者の参加を促し、問いの吸着力を高めることを目的としており、弊社のメンバーにとっても新しく、また大きなチャレンジです。今回は、弊社から田中和子(Voice Vision)、岩佐数音(博報堂ブランド・イノベーションデザイン)がカタリストとして挑戦します。詳しいCQCでの話は実施した後、彼らを招いてインタビューをしたいと思います。

これは、私たちが対話を行い、そこから生まれる問いやアイデアが帯びるエネルギーこそが未来を主体的に作り出す糧だという意志も込められているフォームです。ご自宅から視聴可能ですので、ぜひご覧ください。

 

未来に向けての対話の場-それがアルスエレクトロニカフェスティバル

Credit: tom mesic

この対話を重要視する姿勢は、今年に限った話ではなく、脈々とアルスエレクトロニカの中に受け継がれている文化であると考えています。私は2015年に初めてフェスティバルを訪れた時、ありとあらゆる場所で老若男女がそれぞれ議論を行っていたことに驚きを感じました。異文化の方とお話しすることは、どこに自分が足場を組んで物事を考えているのかという、自分自身の鏡にもなる機会になっています。そんな色々な刺激が詰まったフェスティバルです。今年も未来に向けて、我々は一体何を実現しようとしているのか?そんな大きなことを考える5日間になると思います。次回以降は、コンテンツへと踏み込んでいきたいと思います。ではまたお会いしましょう!

今年のフェスティバルの詳細はこちらから

【関連リンク】
Ars Electronica top page
https://ars.electronica.art/news/en/
Art Thinking Program
https://ars.electronica.art/futurelab/en/projects-art-thinking-program/
Ars Electronica Festival2020
https://ars.electronica.art/keplersgardens/

WRITER

博報堂 ブランド・イノベーションデザイン​ イノベーションプロデューサー​
田中れな

2015年からアルスエレクトロニカとの共同プロジェクトを推進し、世界のメディアアーティストの作品や哲学に常に関心を持つ。未来社会での課題発見のリサーチ・アクションプラン開発など、未来を構想するプログラム制作に従事。SNS上は無口、でも実際はおしゃべり。

#元アイドル#本の虫#常に時間が無い